1.高速鉄道と高速道路


高速道路網の速度制限。高速道路ではいいとこ110km/h、もっと伸ばしても120km/hが限界だろう(出典元:https://blogs.yahoo.co.jp/festiva1202/71206544.htmlアーカイブリンク))

まず、高速道路網については概ね整備が進んでいる。鉄道を整備するよりも比較的安価に建設できるからだ。田中角栄が推進した「輪切りと縦貫の高速道路」は多くの地域で建設が進んでいると言っていいだろう。

だが、高速鉄道網についてはどうか。東京と他地域を結ぶ路線こそ建設が進んでいるが、他地域と他地域を結ぶ路線については進んでいない。
これでは、一方的な東京一極集中を進めるだけと言えるだろう。

2019年現在、北海道新幹線は新函館北斗まで、北陸新幹線は金沢まで開通しているが、これについてもいまだに不要論が出てくる始末だ。
まず北海道新幹線だが、新函館北斗については、札幌延伸のために函館にギリギリ隣接できるラインとして渡島大野が選択されたまで。正直函館延伸の段階ではこれでも健闘しているといえるのではないだろうか。本格的な未来は札幌延伸が叶ってからだといえる。

高速道路・高速鉄道網の開通によって、「弱肉強食」が進んだのも事実だ。しかし、その「強」が、日本・世界の「強」と与することで、さらに強い経済を生み出していったのも事実である。
これまでその地方でくすぶるだけだった逸材が、ほかの大都市と行き来して多様な選択肢を得たことも事実であろう。
結果的には高成果をもたらすといえる。

1.1. 北陸新幹線は山陰新幹線と合わせて舞鶴・園部ルートで

もはや「京都新幹線」と言えそうなレベルだが、北陸新幹線は舞鶴ルートを推進する。理由としては、小浜から途中駅なしで京都へ南下するのでは途中需要が見込めず(旧美山町や旧京北町に駅を作っても需要はないだろう)、また米原ルートや比良ルートに比べれば遠回りという「悪いとこ取り」としか言えない案だ。
小浜京都直線ルートでも、北陸から大阪方面へ向かう人は敦賀から新快速に乗り換える可能性もそれなりにあり得るだろう。よほど在来線から離れていなければの話だが。

それなら、舞鶴・園部まで曲げれば、舞鶴8万人の需要を確保しつつ、京都の通勤最遠エリアでもある園部へも繋げることはできる。そして、園部、あるいは舞鶴~園部間に作れる新綾部からは、山陰新幹線を建設することも可能だ。新幹線を延ばす需要がないというのなら、山陰本線高規格化を進め、新在乗換を図ることも検討すべきだ。

そもそも、北陸新幹線は地方開発のための新幹線でもある。もし、高速で結ぶことのみを考えていたら、軽井沢に曲げることも(これは碓氷峠の回避のためという説も存在するが)、北アルプスを回避することもなかったはずだ。

一応言っておくが、こんな記事を作っていても私は北近畿の地権者でもなんでもないことを付記しておく。

1.2. リニアは静岡県民のためにもなる

リニアは静岡県民にとって、静岡市北部をかすめるだけなのに大井川の水系を枯渇させるだけの邪魔な存在であると思う人がいるかもしれない。しかし、これは大きな誤解である。
リニアの開通によって、静岡県民も利益を受けうるのだ。

かつて新幹線も、「世界三大馬鹿」と称されてた時代もあった。しかし現在どうなったかどうかについては周知のとおりである。
確かに「ストロー現象」は起きる。しかし利益についてはそれだけではないだろう。新幹線「こだま」の効果で、熱海・三島まで通勤圏となった。静岡からも東京・名古屋まで早く行けるようになった。

リニアが開通すれば、東京発速達新幹線の多くは「御役御免」となる。名古屋行きではまだ効果が薄いが、大阪行きになるとこの効果が出てくる。そうすれば「ひかり」「こだま」を中心としたダイヤになる。そうすれば静岡・浜松停車の本数を増やすことも可能だ。さらに改良された新幹線ならば、両駅停車でも東阪間を2時間半程度で結べる可能性も高い上、ダイヤの制約がなくなれば鹿児島・長崎行き新幹線も走らせることもできるかもしれない。

ハード面の改良は確実だ。あとは、ソフト面の改良をすれば、観光需要を得られると思う。

1.3. 第二青函トンネルで青函新幹線の高速化を

青函トンネルは北海道と本州を結ぶ大動脈であり、それもあって旅客・貨物需要は多い。
現在は新函館北斗までの運転だが、これが札幌まで延伸するとなると、現在の予定では東京~札幌を5時間1分で結ぶこととなる。

しかし、青函トンネルで高速化が可能になると、4時間43分で結べるそうだ。
18分差とはいえ、5時間台と4時間台では印象が随分と変わってくるだろう。

これについては、多数の代案がなされている。「時間帯区分案」では、260km/hで走る1本の高速新幹線を設定するという方法だ[1]
しかしこれでは、青函トンネルを通過する貨物列車の4割が運行不能となるという。また、青函トンネルから貨物列車を追い出せば、道内で年間1462億円の損失になるという[2]
北海道~本州において鉄道の占めるの貨物のシェアは4割といわれる。また、近年はエコロジーの観点から、鉄道輸送への転換も進んでいる。
にもかかわらず、これに逆行するのはどうなのだろうか。

高速化を図らなかったとしても、本数が増えれば、貨物運転にも悪影響が出る。また、保線も必要だ。こういう時にもう1本あれば、
最悪どちらかが停止していても、もう片方で運送することも可能だ。

また、もう一つの案もある。整備新幹線から通常の新幹線への格上げを行い、将来的には大宮~札幌間で360km/hでの運転を行う。
大宮以南や仙台駅周辺の線形、青函トンネルの兼ね合いもあるが、3時間台(4時間弱)での運転も視野に入る。
しかし、東日本はよくともJR北海道の財力では厳しいところもあるだろう。
国がある程度資金を出すのも、国土開発のためには必要ではないか?

1.4. 新幹線に関するブログでの記事

脚注

  1. 「第2青函トンネル」建設を 青森県内で待望論 (河北新報 2014年07月09日、リンク先はウェブアーカイブ)】
  2. 「青函貨物廃止で道内1462億円損失 みずほ総研試算 海運転換不調なら」(北海道新聞 2019年5月30日)】

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